やまぐち創生テレワーク実践者・ワーケーション体験者の声
EXPERIENCE

盆踊りでふるさと山口の魅力を再発見する暮らし
山中 篤さん

YCAMとの仕事と街の美しさが移住のきっかけに

—  山口県に移住するきっかけについて教えてください。

山口で生まれ育ち、学生時代は作曲家を目指して勉強し、上京後、現代アートや盆踊りの制作へと活動の幅を広げてきました。その間、東京の他に大分、愛媛など様々な場所で暮らしながら、いつか生まれ故郷にある山口情報芸術センター「YCAM(ワイカム)」で仕事をしたいという夢を抱いていました。2023年に音楽家の大友良英さんからの紹介で、YCAMから盆踊り制作の依頼をいただき、下見で久しぶりに山口市を歩きました。若い頃の自分では気づかなかったパークロードや一の坂川の美しさに心が動きました。何もない田舎だと思っていた街が、40代になって訪れると清々しい場所だと感じました。憧れの仕事が決まったことと街への新しい愛着が芽生え、2025年6月に山口市に移住しました。

(山口に広がるこの景色に美しさと清々しさを感じられるように。)

住まい探しと地域との対話から生まれた「それがええんよ」

移住してからの印象的なエピソードを教えてください。

(地元の方々へのインタビューを通して生まれたフレーズ「それがええんよ」。)

移住するにあたっては、妻と猫と暮らせる住まいを見つけるのに苦労したのですが、知人の陶芸家を通じて、修行僧が住んでいたお寺の離れを紹介していただき、そこに住めることになりました。仕事は作曲や楽器を使用するものは寺にある蔵で行い、映像編集やメールなどの作業は山口県庁1階にあるコワーキングスペース「YY! SQUARE」で行っています。また、移住してからは、商店街の人々に取材して集めた「夜は暗いけれど蛍や星が見える」などのエピソードを盆踊りの歌詞に盛り込み、ネガティブな特徴をポジティブに転換する『それがええんよ』というフレーズを生み出しました。初めて会う人でも説明を尽くせば受け入れてくれる山口の風土や地域の人たちにとても助けられています。

テレワーク施設と蔵を使い分けた創作の日々

— 移住後の暮らし方や働き方について教えてください。

山口に暮らす前は自宅で仕事をすることが多かったのですが、自宅横にある蔵が作曲の場に、YY! SQUAREが作業の場に、YCAMが創作の場になりました。自宅以外に複数の拠点を持つ働き方は仕事の生産性を高めてくれます。その中で、YY! SQUAREは他の利用者が黙々と作業していることもあり、それが集中力を高めてくれますし、コンシェルジュの方との何気ない挨拶や清潔な環境での仕事は居心地が良く、場所を変えることによって気持ちもリセットできます。休日は家族で一緒にゆったり散歩を楽しんだり、地域の人たちと盆踊りの話をしたりしています。山口に来てからの方が人との交流が増えていて、妻も市内で働いていることもあり、暮らしと仕事が自然に溶け合っている感覚があります。

(「やまぐち秋の盆踊り2025」(企画:山口情報芸術センター[YCAM]の様子|撮影:三宅航太郎さん)

山口から広がる盆踊り文化と次世代への思い

今後、山口でやりたいことや挑戦したいことを教えてください。

(「盆踊りを地域に根付く文化に」。山中さんの活動は未来へのバトンをつないでいく。|撮影:三宅航太郎さん)

これまでは東京や地方の各地を転々としてきましたが、故郷・山口の素晴らしさを再発見できたこともあり、これからも長く住めればいいなと思います。盆踊りは商店街の方々に「100年続けたい」と言ってもらえるほど喜ばれており、盆踊りを地域に根付く文化として育んでいきたいです。自分の生まれた土地だからこそ、街の未来に貢献したいという気持ちがより強くなりました。また、山口を拠点に他の地域でも盆踊りやアートを通じて、その土地の魅力を掘り起こし、人と人をつなぐ活動や、高校の文化部など若い世代と連携し、次の世代が山口で自己表現できる場をつくる活動にも尽力したいです。盆踊りが山口の新しい産業や観光資源となれば嬉しいです。

最後に、山口県への移住に興味を持っている方にメッセージをお願いします。

山口の人々は奥ゆかしく、はじめはおとなしく見えるかもしれませんが、一歩踏み込んで話すと、とても親しくしてくれます。私の場合、山口は生まれ故郷ではありながらも、地域の人とは縁がない状態で移住しましたが、商店街など地域の方々に温かく迎えられ、一緒に面白いことをやりたい仲間へとなっていきました。土地に根ざしたいときは、地域の声に耳を傾けること。そして、何かを始めるときは、何のためにやるのかという想いを伝えること。山口は、県外から来た人でも胸を開いて話せば距離が縮まり、ゆっくりと関係が育まれる土地だと思います。暗い夜空を眺めながら、人や文化と繋がる感覚、「それがええんよ」をぜひ味わってみてください。